白田秀彰 インターネットの法と慣習-かなり奇妙な法学入門
hotwiredの連載コラムをまとめ直す形で出版された新書である。本書のテーマを一言で表せば「ウェブと法・所有権制度と民主制」とでもなるか。前半は法哲学的トピックと知的財産権についての話。後半はそれよりもネットと民主制に寄ったもの。
以下、後半部分の話に個人的な意見を混ぜた整理。
インターネットに入り浸った経験がある人には、ウェブが可能することに対する夢や理想が色々あるだろう。それは、ビジネスだけでは無く、文化や社会制度や人の考え方、コミュニケーションのあり方についてである。その夢や理想は当然異なってはいるだろうが、方向性は同じだろうと思う。それは、色んな意味で現実社会よりも自由な世界である。その方向付けとは、(是非はあるが)匿名性がいわゆる「タブー」を気にしない一定の自由な言論を可能にしていることや、距離の制約を排し人と人とをP2P的に繋げるウェブのアーキテクチャがもたらしているのではないかと思う。
そんなウェブ的な選好や価値観を持った人=ネット世代は、現実社会の制度や選好に対しては矛盾を感じることも多いだろうに、現実に対して働きかけ、制度を変えていくような活動が活発に行われているかというと、そうではない。今のところ、ウェブ上で現実を変えるような活動をしてるのは、ネット発で現実の社会を変えようという人たちより、もともと社会的な活動をしており、ツールとしてネットを使っている人たちが多いのではないか。
結局、ネット世代人が現実社会を変えようと動かなければ、現実社会はネット世代の利益を反映するようには変化しない。むしろ、現実社会はその自由を制限するためにネットを利用するようになるだろう。それはローレンス・レッシグが予言するところである。アムロの言をもじれば「僕が一番ネットをうまく使えるんだ。一番、一番うまく使えるんだ。」という世界になりつつあるのかもしれない。
本書は、そんな我々に向けての「おまいら少しくらい運動しなさい」という呼びかけである。
呼びかけられた我々は、何が出来るのかを考えて、少しくらいは運動しなければならない。
ウェブ進化論の後に柳の下のどぜう狙いで雨後の筍のように出てきたWeb2.0本を読むくらいなら、絶対に本書を読むべきだろうし、著者の白田先生のサイトもチェックしておくべきである。