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北方領土交渉秘録
東郷 和彦著
発売日:2007.5
出版社:新潮社
価格:\1,890
ISBN:4103047712

本書は佐藤優 国家の罠と同じく、あの騒動で外務省から追放された元官僚(当時欧州局長→オランダ大使)の書いた北方領土交渉の本。

でも、佐藤氏の著書の方が読みやすいし、断然面白い。それは、本書の解説を書く佐藤氏が、自著を「個人にこだわった視座」、本書を「鳥瞰的視座」と表現しているとおり、やはり視点の違いなのだろう。これが「インテリジェント・オフィサー」と「省幹部」との違いか。

本書は中盤の殆どが北方領土交渉の経緯にあてられているためか、外交をよく知らないでふつーに読み始めると中だるみする(中だるみした)。

読者が途中で退屈と感じるのではないかという点は佐藤「ラスプーチン」も危惧しており、前提知識のない読者が中だるみしないように巻末の解説で色々と書いてるので、本書をこれから読む人はまず解説を読んだほうがいい。

本書の佳境である(プーチン現大統領の政界登場以後のロシアとの外交が描かれている)10~13章は一番アツく、ここから最後までは歴史としての北方領土交渉の経緯ではない。東郷氏の北方領土交渉に対する思いと、一連の事件で交渉の枠組みが完全に壊されたことに対する無念さが込められている。勢い、読んでいるこちらとしてもページをめくる手が止まらなくなる。この終盤で、プーチン政権との交渉経緯を通して東郷氏が考えるところとなった、今後とるべきロシア外交のスタンスが集中的に著されており、その説得力には圧倒される。

新聞や雑誌にも、対ロ北方領土交渉について、様々な議論が掲載されるが、現実を見据えつつ、領土問題をいかに解決していくかという説得力において本書の比肩するものはほとんどないように思う。

だけど、結局、あの一連の騒動が一体何だったのかは、本書を読んでもいまいち分からない。佐藤氏の言うように、時代のけじめだと言うのも納得しがたい。騒動が沈静化し、追放された立場の人たちが説明をはじめた今こそ、追放した側からの説明も聞きたい。

「組織の中の意見を集約するのに外の力を使ったから」という組織内部の原因で国の主権に関わる領土交渉が崩壊したんだとしたら、それは本当にアホらしいことである。

あの当時、本書に書かれているような領土交渉の経緯や考え方が、行政の当事者の立場から多くの国民に理解されていれば、あんな大騒動にはならず、領土交渉は崩壊することなくは順調に進んでいたのかもしれない。

そういう意味で、外交に限らず、行政は政策決定についての情報をもっとずっと積極的に発信していくべきだとも感じる。これに限らず、行政の意図がよく理解されないままに、一部だけを変にとりあげられてネットで叩かれることはよくある話。

ネットがまだのどかだったころには、政府機関の職員が業務時間中に実名で掲示板上で政策議論を投稿してたなんてこともあったとか。そこまでいかなくても、何らかの手段で直接的に対話していくのって必要だ。

とりあえず、各省とも新着情報をフィード配信するくらいのことは最低限やらないといかんのではないか。というかフツーに不便だからフィード配信しましょうよ、広報担当官殿。

北方領土交渉秘録
東郷 和彦著
発売日:2007.5
出版社:新潮社
価格:\1,890
ISBN:4103047712


北方領土交渉秘録―失われた五度の機会

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