秋に池袋のジュンク堂で買ったまま、積ん読してた本山田奨治「<海賊版>の思想」を読んでから、ああ…そういえば…と思って読み始めました。






本書の原著は、


Arthur Simons Collins, “AUTHORSHIP IN THE DAYS OF JOHNSON Being a Study of the Relation between Author, Patron, Publisher and Public,1726-1780″, R. Holden & Co., 1927.


という80年前にイギリスで出版された研究書。それだけあって、どんなことをした人物かというような注釈なしで18世紀イギリスの作家や貴族の名が大量に出てくる。高校世界史くらいの知見しか無い凡俗では読むのに多少の抵抗感が。。。その他、途中で別の本に何冊か浮気したり、通勤時間を睡眠に充てたりしていて、昨夜やっと読了。






本書では「<海賊版>の思想」においてメインテーマとなっている独占的書籍業者と<海賊版>書籍業者との係争にも当然触れながら、当時の出版文化をとりまく事情が詳細に著されています。作家(文士)の生活の糧がパトロンによる金銭援助から書籍業者からの支払いへと変化する過程、読者層の形成と作家(文士)の社会的地位の向上、それらとあわせて著作権の誕生の過程や当時の扱われ方も書かれており、結構盛り沢山な感じ。






「<海賊版>の思想」が、現代日本のコンテンツを巡る議論の中で生まれた本である一方、本書は原著が80年も前にイギリスで出版された本ゆえに、現代日本の著作権論争の文脈からは少し離れたものとなっていて、著作権に目をつけると言うより、原著のタイトル通り作家(文士)にこそ焦点があたっている。これについては、例えば「<海賊版>の思想」においても、幾度か「<海賊版>書籍業者は別に義士であったわけではなく、独占的書籍業者と同様、経済的利潤を追求していたに過ぎない」との旨、書かれているんだけれども、本書を読むと独占的書籍業者が出版を独占していたことも、パトロン制からの過渡期の中では、社会的に益になっていた部分もあることが暗に示されている。具体的には「独占的書籍業者は作家(文士)に体してはケチというわけではなく、むしろその独占利潤をもって二流・三流の作家(文士)にも気前よく支払をしてやり、コンテンツの供給源を涵養して読書文化の発展をもたらした」的な文脈で読める部分がいくつかある。






…ていう感じで「<海賊版>の思想」と本書をあわせて読んで、著作権の誕生期をより多面的に理解できた気がしました。今、80年前にその200年前の出版文化の変化を研究した本を読んで、なんか人間ってあんまり変わんないなと思うのが不思議な感じ。あと、おカネの話が具体的な金額でいっぱい出てくるので、読んでいるうちにギニーとポンドの違いや当時のポンドの価値とかもついでに調べたりして無駄知識が増加。






オンライン書店の在庫状況を見るとどうも絶版というか流通停止してる模様だけど、それには惜しい良書。岩波文庫っぽくはないけど講談社学術文庫あたりで収録してくれたらいいのに。




出版社にはまだ在庫ありそうな感じ。



十八世紀イギリス出版文化史 作家・パトロン・書籍商・読者
A・S・コリンズ著 青木健訳 榎本洋訳
発売日:199410
出版社:彩流社
価格:\3,873
ISBN:4-88202-319-9